2013年7月22日月曜日

2013年7月17日関東の界雷

2013717日予想反省会
警報はないのではと思っていました。
警報が発表されたか知りませんがすくなくとも警報クラスの現象になりました。
天気予報の精度があがっても、警報クラスの現象が予想できないなら本末転倒です。

今回はいろいろな要因がありいつも以上にまとまらないかもしれません。

注意
温位は1000hPaに断熱圧縮して大気の安定度を推し量ります。
断熱圧縮するにはエネルギーが必要です。
そのエネルギーは位置エネルギーを使いますので、一般に500850hPaの空気塊を1000hPaまで断熱圧縮しても、高さが異なり比べることができません。
1000hPa基準の温位は物理的に誤りなのです。
本来は、同じ高さまで断熱圧縮または膨張させて比べる必要があります。
500850hPaの空気塊を同じ高さまで断熱圧縮して、1000hPaにこだわるなら1000hPaなるように自由膨張させます。
しかし自由膨張で、空気塊の温度は変化しませんから事実上自由膨張させる必要はありません。
私は地上0mまで断熱圧縮した温度を温位と定義して用いています。
たとえば1000hPa定義で台風の温位エマグラムを作成すると絶対安定になる不具合が生じます。
地上0m基準で作成すると、地上の空気塊は15000m程度まで上昇すると判断でき、現実を説明してくれます。

地上温位は1000hPa定義の温位より12kほど高くなります。(1000hPa面の高度は100200mの上空にあると言うことです。)
850hPa面が1500mにあるとした場合の誤差は次のとおりです。


850hPaの温位や相当温位の誤差はほとんどありません。
気圧面が1400mにあると海面0m基準の850hPa温位は1k下がることになります。
そもそも、定義の違うものを比較するべきではないのですが・・(偶然、誤差は小さいようです。)
現実に気象庁は1000hPaの温位を採用しています。

1.実況
繰り返しになるかもしませんが高層実況を再確認します。
500hPa

秋田で北風です。UCLは動き始めましたがゆっくりで、本州は北から寒気が落ちやすい場が続いたようです。500hPa天気図ではわかりませんが、モデルでは能登半島の西に小さな寒気を表現しています。

850hPa

秋田は西風ですね本州上に850hPaの寒気は落ちにくいですから、850hPaより上空の寒気が降りてきたようです。
700hPa
09

21

3120mの等高度線が深まっています。
これだけでは断言できませんが寒気が西進してきたのと同じ効果があるかもしれません。
0m基準の温位では高度が下がれば温位の値つまり、飽和相当温位が下がります。
現象的には、レーダーエコーの様子と重ねると谷が深まり寒気が北から降りてきたようにみます。

温位エマグラム
館野
モデルでは17925hPaの相当温位は最大で350kクラスの相当温位が予想されています。

340kの空気塊は10000m程度上昇すると考えられます。
10003000m位に安定層があります。
輪島

自由対流高度(LFC)は1500m程度、雲頂は10000mを超えそうです。
安定な大気(SINが大きい)に見えますが、地上気温30℃で2000m程度まで等温位になりますので水蒸気の輸送が始まり、熱雷が発生してもおかしくありません。
図の条件付不安定は昔だったら「種まき効果」とか説明されたのかもしれません。
もっとも、温位エマグラムを書く人はいませんでしたけど・・
参考までに1000hPa基準の温位エマグラムを示します。


気象庁はこの温位エマグラムを使っているので340kの空気塊では雲頂高度6000mになると考えます。
この方法でも、かなり雷は当てることができるようになりました。
しかし、実際より安定した表現になってしまいますので、解釈できない事例にぶつかることになります。
予想図はすべて1000hPa基準の相当温位です。

850hPaの相当温位予想で暖湿のルートを確認しておきます。

朝鮮半島付近で暖湿に寒気が突っ込んで前線の活動を活発化させています。
この後、日本海に低気圧性の循環を予想しています。
日本海に寒気が下りやすいと考えるべきだったのかもしれません。
暖湿は日本海から本州に入ったと思います。
大陸からの乾燥したイメージで割引たくなる場なのですが、高相当温位はもと台風が運んできたのですから暖湿の層が厚いと考えるべきでした。
他の警報事例を振り返って予想図などを見ると「腐っても鯛(台風)かあ~」と嘆くケースです。
エコーの様子などから、700hPa辺りの高度場が東から下がり、寒気は北から降りてきたと思います。
「こんな事、あるのか!?」って感じです。
難しく感じたのが納得できます。

2.実況と500hPa温度予想
実況

18日は静岡で警報になりました。


朝岐阜県にあった雷雲が南東進して関東は界雷となりました。
179時(00z)に能登半島の西に寒気があって、これが南下して界雷を引き起こしたようです。
ただ、925~700hPaにある安定層が壊れないと界雷にはなりません。



3.モデルと実況
7179時実況とイニシャル
実況



新潟県の海上のエコーが不気味に思ったのは前に書きました。
輪島の温位エマグラムから10000m程度の雲頂になってもおかしくなく、大量の水蒸気が西から供給されやすいからです。
輪島と館野で1000hPa基準と地上0mの相当温位実況値を確認しておきます。

700hPaは飽和相当温位です。
1000hPa基準   925hPa 850hPa 700hPa
輪島                 334k    335k     339k
館野                 334k    331k     336k
0m基準
  輪島         334k    335k      337k
  館野         335k  330k   334k


図は925hPaの相当温位に850hPaの温度を加えました。
925hPaで輪島は3k、館野5k程度過大に表現しています。
そう言われれば、輪島周辺の相当温位表現は不自然です。
おそらく、輪島の相当温位が低くなる必然性は無いと思います。
これでも、モデルは修正を試みているのかもしれません。
新潟海上のエコー付近は850hPa温度16℃、飽和相当温位342kです。
図からは925850hPa間のSSIはほとんど0kです。
西には水蒸気の補給源がありますから現象はある程度納得できます。
河口湖は気圧918hPa相当温位340k、富士山の気圧650hPa、相当温位及び飽和相当温位は330kでした。
モデルは河口湖でも5k程度過大です。
富士山は館野の観測値と整合しています。
700hPaの実況解析による温度分布と館野の温位エマグラムから河口湖の上空700hPa付近の飽和相当温位は館野と大きく変わらないと思います。
富士山は湿度100%ですから、河口湖との間にかろうじて安定層があり地上空気が根こそぎ上昇している場ではなさそうです。
条件付不安定で、条件を満たしていないことになります。
予想図で不安定と考える場所は誤差が入っているようですから、相対的に不安定と解釈すべきのようです。


850hPaの相当温位も確認しておきます。


輪島、館野ともに5k程度過大です。
調査するのは大変なので・・、今後誤差がどの程度で出発しているのか注意することにします。
下図は各地の地上相当温位です。(分布が書ければよいのですが・・私は毎時分布図を見ていました。)

富士山と925hPaを比較できませんが、925hPaの相当温位解析は地上と比較すると適当か過少となっています。
三重県は尾鷲で過大、上野は過少、四日市は適当に表現されています。

71712時実況と予想
 
長野のエコーは岐阜県から流れ込んできたものです。
熱雷的なものではありません。

850hPa18℃の飽和相当温位は350kですから埼玉県秩父辺りと静岡は不安定と考えられます。


モデルの925hPaの相当温位は地上実況と比較すると秩父(12347k)は適当で、三島(12339k)は過大です。
東京、山梨、埼玉の県境(雲取山付近)では熱雷としてもエコーが出てきてもよいころです。
実況をよく見ると、雲取山付近にエコーが出始めています。

長野県は難しいです・・。
日射で山岳の温度が上がるので、盆地の上空は暖まらない。
盆地で発達するケースと山沿いで発達するケースがあるようです。

12時、軽井沢の気圧902hPa、相当温位347k、温位307308k
850hPaまで等温位になっているとすると850hPaの温度は2021℃です。
モデルは相当温位と850hPaの温度を過少評価しているかもしれません。
モデルの日変化はおそらく強制的なものでしょうから軽井沢の誤差は仕方ないでしょう。

?余計なことですが・・松本の相当温位はあまり変化がありません。
飽和相当温位は上がっていますから日照はでています。
日射によるエネルギーの増加分はすぐに上昇流になって逃げてしまうかもしれません。
軽井沢の相当温位は日射があれば麓からのエネルギーの移流があるってことらしいです。


飯田の12時の気圧953hPa、相当温位は347kですからモデルは過少評価しています。
相当温位が上がっているのは南からの移流と考えます。

71715時実況と予想 

エコーは長野県から流れ込んで急発達しました。

長野県18℃エリアが縮小しており、850hPaでも寒気が通過していたのかもしれません。

予想図からすると静岡中部(静岡西部・中部・東部・伊豆って感じで分けて考えてください)から西のエコーが弱い気がします。
関東ではこの後エコーが全体的に広がるのですが、東海では静岡東部で雷雲が発達したのですが静岡中部から西ではエコーは広がりませんでした。
三重県でもエコーが出ているので寒気はかなり西まで落ちたのでは?と思うのですが関東のようにエコーが全体的に広がってよさそうに思えます。

71718時実況と予想

状態が悪いのはわかるのですが、実況と予想が結びつけるのが難しくなりました。
静岡のエコーは翌日警報に結び付きました。
実況がわからないと予想もできないわけです。
しかし、この時間は新しい資料で検討が終わっているはずです。 


71721時実況と予想


途中ですがアップしておきます。





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