9月2日の資料を見ることにしました。
イニシャルから考え方を紹介しながら見ることにします。
9月2日9時
300hPa
静止画的にみると西谷、太平洋高気圧が強まった位のタイミングで高気圧は東進するイメージ。
中国大陸の寒冷渦が南下する可能性(大変なことになる)を懸念しながら予報作業をすることになります。
担当はどんな感じで南下しているかは把握していると思います。(たまに見るので私はわかりません。)
500hPa
すごい寒冷渦ですね。太平洋高気圧の動きが気になります。東進傾向なら渦は接近してきそうに思えます。台風はかすんでいるように思えます。
700hPa
関東は南西風の場、晴れれば気温が上がりそうです。
こんな場で不安定を考えなければならない担当者は大変だと思います。
850hPa18℃の飽和相当温位は350kです。
予想
9月2日9時、850hPa相当温位予想
当番なら私は342kまで色塗りしていると思います。
静止画的にみると南から暖湿が入ってきているようにはみえません。
海上からは同じような空気が入ってくる感じです。
日本付近を拡大します。
関東の相当温位は約342kを予想しています。
関東の相当温位の間隔は開いていると考えます。
新しいモデルのイニシャルを見ます。
9月2日9時イニシャル
850hPa相当温位と風
関東平野は東京湾でやや高く解析されていまが、関東南部の相当温位は345~6kです。
500hPa気温
500hPaのマイナス6℃の飽和相当温位は342kです。
マイナス6℃線の北側で850hPaの相当温位が342k以上ならSSIはマイナスになります。
500hPa、マイナス5℃の飽和相当温位は344kです。
長野県や関東を含め広い範囲でSSIはすでにマイナスになっています。
温位エマグラム
9月2日9時の温位エマグラムをみます。
輪島
非常に危険な分布です。
下層に相当温位340kを超える空気が入れば12000m程度上昇する分布です。
幸い(被害があったらすいません。グレードの問題です)、輪島には下層に高い相当温位の空気塊は入ってきていないようです。
内陸には高相当温位がありますが、海上にはなく水蒸気の積極的な供給元はありません。
館野
自由対流高度は4000m近くになっています。
このグラフから850-500hPa間のSSIがマイナスであることが読み取れるでしょうか?
850hPa(高度約1500m)の飽和相当温位は925hPa(約800m)の相当温位より高いので925-850hPa間のSSIはプラスです。
これが、関東でエコーが出ていない理由です。
ついでなので、防衛省の方が観測している浜松のデータをみましょう。
850~700hPa辺りの飽和相当温位が館野より低くなっています。
飽和相当温位は気圧と温度だけで決まりますから、850~700hPa辺りに寒気が入り始めていることがわかります
ざっとエコーの様子を見ます。
9時モデルイニシャルと実況を比べてみます。
9時実況
9時モデルイニシャル
925hPaの相当温位に850hPaの温度(飽和相当温位)を重ねます。
南西風でエコーが流されている様子がわかります。
先走りますが、竜巻は14時頃埼玉県越谷ですから竜巻の発生したエコーは特定できます。
東京奥多摩で発生したエコーが南西風に流され、埼玉県に入ると弱まり、その南側で竜巻を発生させたエコーが東進しました。
静岡県で過大に見えますが、10時には強いエコーが点在するようになります。
地上の相当温位も比べておきます。
925hPaの表現は静岡県では適切ではないのかもしれません。
9月2日12時予想と実況
12時実況
12時モデル予想
A東京西部・埼玉とB千葉茨城県境に355kの高相当温位域が予想されています。
Bは南西風に流され積乱雲にはなれなかったようです。
Aはこれから東京多摩でエコーが発達し埼玉県へ流れ込みます。
本州上でライン状になっているのは志摩半島のものが南西風で流されているのかもしれません。
新潟県中部のエコーは海岸よりになっているのは寒気に近い方に上昇しているものと思います。
Aは弱風域ですので、エコーの動きは実況を追っていけばよいと思います。
12時の地上相当温位を見ておきましょう。
埼玉県越谷はすでに地上相当温位は350~355kの間にあります。
850hPaの飽和相当温位は350k以下ですから地上850hPa間は不安定になっています。
9時館野の700hPaの飽和相当温位は10℃として347kです。
500hPaや850hPaの温度予想からそれほど変化しないと考えられますから越谷や700hPaに対しても不安定です。
エコーが出ていないのは850~700hPaに対流を抑止している層があると考えられます。
13時実況
動画で確認してほしいのですが、竜巻を発生させたエコーは地上相当温位350~355kに沿って発達しているように見えます。
その延長線上に越谷があります。
14時
台風や前線の中にできると言われるスーパーセルとは異なります。
地上相当温位を見るとやはり350~355kの間にエコーはあります。
何故、地上相当温位の高い東京でエコーが発達しなかったのか?
例えば850hPa18℃の飽和相当温位は350kで、850hPa19℃の飽和相当温位は354kです。
このケースでは850hPaの温度が1℃高いと地上相当温位は4k高くないと不安定になりません。
これは不安定な所と安定な所がはっきり分かれると言うことで、必ずしも地上相当温位が高いからと言っても不安定にならない事を意味しています。
当たり前ですが、不安定は下層の暖気と上層の寒気の兼ね合いなのです。
不安定は、温度線に沿ってライン状(寒フレがわかりやすい)に形成されるのが一般的です。
残念ながら、今回の資料ではきれいに寒気をとらえきれませんでしたが、850~700hPaの寒気が原因だと想像します。
風の収束が積乱雲を発達させたとの説明が一般的ですが・・
東京の地上空気塊は越谷上空との間で不安定であることは間違えありません。
上下が逆になりますが、私は風呂の栓を抜いたような現象のような気がします。
竜巻は栓を抜いた後の穴が小さいのだろうと思っています。
15時
15時モデル予想
海上の不安定域は流されてしまいますので積乱雲に発達しないと考えられます。
少し過大気味ですが、イメージはあっていると思います。
地上相当温位が東京湾で大きく違いますが、ヒートアイランドで仕方がないのかもしれません。
乾燥域が入ってきたと考えてよいと思います。
竜巻の原因ははっきりわかりませんでしたが、竜巻をもたらしたエコーは追いかけることができました。
9時イニシャルのモデルは午後になって入ってきますから、実際に予想ができたかどうか別問題です。
しかし、地上相当温位は毎時確認できますからエコーが東京に近づけば発達すると機械的に判断できたはずです。
結論としては、越谷や東京に溜まった高相当温位と日射がエネルギー源で、おそらく850~700hPaの寒気がきっかけだったと思います。
越谷には南から湿った暖かい空気は入ってこなかったと思います。
こともとあって、日射によってさらに温められたのだと考えられます。
東京の高相当温位(ヒートアイランド)も竜巻の一因になっていると思われます。
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