2013年9月23日月曜日

2013年9月23日ひさびさに天気図を見ました

天気予報の解説で、「湿った北東風の影響で雨が降り、気温が上がりにくい」と説明されることがあります。
北東風が吹くのは地上ですから、地上に湿った冷たい空気が入ることになります。
実際にそうした事が起っているように見えるのですが、地上高気圧の圏内で起こることがあり予報官には何故雨が降るのか分からず予報を外していました。
最近はモデルの精度が上がり、予報を外すことは少なくなったと思います。
ただ、何故雨が降るのか分からない予報官は多いかもしれません。
「冷たい北東風で雨が降った。」と言えば何か説明したように聞こえますが・・
冷たい北東風で何故雨が降るのか、わからなかったのです。

今回は北東気流と呼ばれるきれいなパターンにていますが・・

北東気流の解説はウェザーニュースさんの解説がよくまとまっていると思います。
http://www.otenki.co.jp/com/list/ch_hokuso_08_05.html
予報士さんは読んでおくべきだと思います。

1.201392221時高層実況
300hPa

北海道は深い谷が抜けました。2つ台風はあまりはっきりしません。
500hPa

昨夜(2221時)本州上に弱い谷がかかり始めています。
300hPaの流れはありますから、23日朝の内か午前中通過ってイメージでしょうか。
そういえば最近「上空の気圧の谷が通過して」と言う定番の解説はあまり聞かれなくなった気がします。
予報士さんが高層天気図を見なくなったためかもしれません。

700hPa

館野と八丈島が北北東です。
谷が抜け、台風が寒気を太平洋側で引っ張り込んでいるようにも見えます。

850hPa


八丈島は東風で湿っています。
台風からの湿りが入っているようです。
館野は北東ですが、わりと乾燥しています。


2.温位エマグラム
201392221
館野

残念ですが、入手できませんでした。
あまりおもしろくないので・・スミマセン
ワイオミング大の23日の速報値を掲載します。



3FXJP854
239時予想

北日本には850hPaの高気圧循環が載っています。
北東気流は、この高気圧後面の湿った南東風が地上高気圧に乗り上げるイメージです。

高気圧循環は東に抜け北日本では南東風、関東でも南風成分をもっています。
北東気流の解説にかなり近い場だと思います。
気になるのは房総半島にかかる330kの高相当温位の塊です。
ちょっとカンニングしますと、千葉県南部の予報は「 所により 夜 雨」で降水確率40%でした。
所によりではなく、1ミリ以上の雨が降ると考えると降水確率50%以上にするのが暗黙(?)の了解事項です。
担当者は少し迷ったかもしれません。
伊豆諸島の実況を見れば、雷の可能性もありますので50%以上にしたほうがよかったかもしれませんが・・
時間的余裕はありますので、日勤者に任せたのかもしれません。



4.モデル
本州は谷の通過がありますので500hPaの温度予想を見ておきます。

500hPaのサーマルトラフは午前中に通過するようです。
23/00Z2309時予想です。

201392221時イニシャル

いつものように925hPaの相当温位と850hPaの飽和相当温位(=温度)を重ねました。
黄色く着色した所は850925hPa間のSSIがマイナスで不安定と判定できるところです。

不安定は過大に表現されているようですが・・相当温位の値は340k以下と絶対値が小さくこの程度なのかもしれません
愛知、静岡県境の不安定は表現しています。栃木県のエコーを表現しているかは時系列的に調べたほうがよいかもしれません。
気になるのは伊豆諸島に出ているエコーです。
2221時地上相当温位(1000hPa基準)は銚子335k、勝浦338k、大島332k、三宅島336kでした。
北東風による925hPaの低相当温位の流れ込みは、実況により修正する必要がありそうです。
伊豆諸島は神経を使う場になるかもしれません。

236時予想

伊豆諸島には330kの相対的な高相当温位の塊が時々通るようです。
東から西へエコーは移動するタイプですのでやはり神経は使いそうです。
本庁の優秀な若い人が見ているのでしょうから、あまり心配はないと思います。



239時予想

相対的な高相当温位の塊は計算されているようです。
まだ、エコーの動向は追いやすいか?ちょっと苦しいか?頑張ってもらうしかありません。


2312時予想

不安定域が房総半島に接近するようです。
房総半島に330kがかかる予想です。
15時予想がこれより悪いなら、注意報(雷)の準備をしたほうがよいでしょう。
私は温位エマグラムが見られない状態ですが、あまり悩まずの発表したほうがよいと思います。

2315時予想

北日本の850hPaの寒気が強まっているように思えますが、少し不自然な気がします。
日変化で寒気を強めているのか?海上から冷たい空気が入るわけではありませんから信用すべきか迷います・・
房総半島や伊豆諸島は新しい資料で瞬間的に判断するか、現象が起きてしまっているかちょっと大変な時間帯があるかもしれません。(「迷ったら」の話ですが・・)
福井から石川県の相当温位が高くなるのが理解できません。
こちらは、日変化で高くしているのかもしれません。
少し眉唾な予想に思えます。
水蒸気の供給元はありませんからあまり気にしなくともよいのかもしれません。


FXJP854では南成分の風が予想されていましたので、細かい850hPaの風予想を見ておきましょう。

関東は東風のようです。
台風もからみ、高気圧循環の移動も順調なのできれいな北東気流の形にはならないようです。
日本海側の高相当温位はやはり理解できません。

2318時予想

房総半島(南)と伊豆諸島のもやもやした状態が続きますがこの時間帯は新しい資料で判断できますし現象があればすでに起こっている時間帯です。

2321時予想

335kの塊の動向がカギですが、今の所かなりしつこそうです。
関東南部の沿岸部は注意が必要と言ったところでしょうか。


***
気象庁は台風には全神経を使って追っています。
少ない資料で追っても雑音にしかならないと思います。
降水量予想は、大雨ガイダンスなどがないと予想はできませんので意味もないと思います。

今回はほとんど雑音になりました。

冬型の強風や関東の雪予想が必要になるまで興味深い現象は追えないかもしれません。
練習で、時々天気図を見る程度になると思います。

****
しかし、太陽がでると雲が薄くなる傾向なんてあるのか?
どうやって調べたのか不思議です。
昔、時間別、1時間雨量を調べた事があったような気がしますが、つまらない(違いがなかった?)からまとめなかったと思います。
若いころ北東気流などで予報を外し、何度も「太陽がでれば、雲は消散してくれるんじゃないか」思った事を思い出しました。


2013年9月12日木曜日

20113年9月12日 谷が通るようです

20113912
しばらく、資料を見ていませんでしたので練習がてら見てみました。

高層資料
201391121
300hPa

強風帯は2本あり、南のものが日本海で東西に走っています。
系(擾乱)の動きは速いかもしれません。

500hPa

日本海中部に谷は進んできそうです。
6時すでに能登半島に発達した雨雲がかかりました。
感じは上滑りの印象=界雷をもたらす可能性は低いと言う印象です。
予報は新潟を中心に雷表現していますから印象より不安定なのかもしれません。
能登半島のエコーが気になった可能性もありますが・・
予想図をみていけば判断できるでしょう。

700hPa

晴天ベースなら太平洋側は山越えで気温が上がりそうです。日本海は谷前面で輪島から北で湿っていますが太平洋側はおおむね乾燥しています。

系(擾乱)の動きは速そうで、850hPaの西側には新たな寒気もないので、今日一日の一過性の現象のようです。

温位エマグラム
201391121
館野


1800から3000mに安定層(対流抑止層)があります。
350kを超える下層の暖湿が入れば、警戒しなければなりません。

輪島

自由対流高度は1500m程度とみてよさそうです。
7000m程度まで上がりそうです。
下層の暖湿が予想されれば注意すべきです。
まだ、予想図を見ていない時点での印象ですが、4時の輪島のエコーをみれば雷表現は適当だと思います。

850hPa相当温位予想
20139129時予想


912日06時予想
結果論ですが、能登から新潟県あたりで、やや北風成分をもった風と西風が収束しているのかもしれません。
能登のエコーをみれば当然の考え方だとは思いますが・・


長野・山梨辺りでしょうか。日変化的に相当温位が高くなったと思いますが・・
西日本では高気圧性の循環が見られます。


モデルです。
91121時イニシャル

925hPaの相当温位と風に850hPaの飽和相当温位(=温度)を重ねました・
850hPa18℃の飽和相当温度350kです。
内陸で高相当温位が解析されていますが、水蒸気の供給はありませんので実況でなにもなければ気にすることはないようです。

9126時予想


能登半島に345kの相当温位がつっかける予想です。
能登半島の850hPaの温度予想は16℃で飽和相当温位は342kです。
モデルは不安定を予想しています。
雲頂高度が確認できませんが(気象庁では確認できます)温位エマグラムから8000m程度ではないかと想像します。
内陸から暖湿が供給されているように見えるのが気になりますが、実況資料がモデルを支持しているならモデルを信じるわけです。
西から来たものが押し下げられた結果かもしれません。
確かめるには時間がかかりますので、先へ進みます。

9129時予想


不安定域は新潟県下越にかかる予想です。
820分、エコーは新潟県上越海上へ接近してきました。
925hPaの風は西風ですから、能登半島の影響が無くなった時点で一気に下越に流れ込みそうです。モデルを信じてよいと思います。(タイミングは1時間くらい遅れるかもしれませんが・・)
こうしたときは、下層風の収束を注意しなければなりませんが、そうしたことはなさそうです。

四国の高相当温位域はこれから拡大するのですが・・水蒸気の供給が無いように思えるですが・・資料がないのでこれ以降触れません。

91212時予想

西日本はどう判断してよいかわかりません。
850hPaの相当温位予想では内陸に高相当温位域が入り込む予想にみえますが、925hPaでは水蒸気が供給されているか判断できません。
カンニングして福井の予報を見ると「昼前から昼過ぎ雨」所により「朝から夕方雷」
でした。
「嶺北は乾燥空気が入りそうなのでちょっと悪すぎるかな?」って印象を持ちました。
しかし、たくさんの資料を見た結果なのでしょうから・・信用するしかないか?
この時点で、関東に暖湿は入っていない予想になっています。
この風系で、何故気温が上がるのかって気もしますが、850hPa18℃で、乾燥断熱で地上まで下せば+15℃で33℃になるので不思議はないようです。
乾燥した暑さってことかもしれません。(沿岸は知りませんが・・)

9月1215

福井はやはり、乾燥空気が入りそうです。実際に予報を出せるか別ですが岐阜県の山岳で熱雷があるかどうかかもしれません。
新潟県の山沿い付近も同じです。
日変化的に相当温位が高く計算されていますので、多分、曇天なら割り引くべきで、加えて海上から乾燥空気(低相当温位)が入ってくるので広範囲の雷雨にはならないと考えます。
群馬・栃木の雷もかなり限定的ではないかと思います。(私の考えは間違えかもしれません。925と850hPaだけで考えるのかなり無理な話なのです。)

91218

長野県はわかりませんが、やはり、熱雷のイメージは弱いです。
相当温位の集中帯が気になりますが、これもモデルは「乾燥空気がありますよ」と言っているように思います。


******
よく予報士が使う湿った空気ですが・・・
予想資料を見ずに使う方が多いように思います。
手に入りやすいのはFXJP854で、850hPaの相当温位予想です。
FXJP854を見る限り、9月12日に関東に湿った空気は入りません。
どこの高さに湿った空気が入ると解説して頂けるとうれしい。


高層実況とFXJP854の色塗りは毎日実行して下さい。

*****

1時間30ミリ程度の雨が降り続けば、災害が起きてもおかしくありません。
天気予報を外してこうした雨が降ることがありますが、そうした場合、NHKラジオに相談するのは間違えです。
新潟県下越では、下層風の収束でこうした雨が降り続き警報クラスの雨になることがあります。
こうした話題に対して、NHKは地元気象台に問い合わせるようするべきです。
1時間30ミリ程度は、放送したとおり、「どしゃ降り」です。
地元気象台に確認もせず、「弱まります」と放送するのはいかに危険か認識して下さい。





2013年9月3日火曜日

2013年9月2日の竜巻

92日の資料を見ることにしました。
イニシャルから考え方を紹介しながら見ることにします。

929
300hPa

静止画的にみると西谷、太平洋高気圧が強まった位のタイミングで高気圧は東進するイメージ。
中国大陸の寒冷渦が南下する可能性(大変なことになる)を懸念しながら予報作業をすることになります。
担当はどんな感じで南下しているかは把握していると思います。(たまに見るので私はわかりません。)

500hPa

すごい寒冷渦ですね。太平洋高気圧の動きが気になります。東進傾向なら渦は接近してきそうに思えます。台風はかすんでいるように思えます。

700hPa

関東は南西風の場、晴れれば気温が上がりそうです。
こんな場で不安定を考えなければならない担当者は大変だと思います。

850hPa18℃の飽和相当温位は350kです。

予想
929時、850hPa相当温位予想

当番なら私は342kまで色塗りしていると思います。
静止画的にみると南から暖湿が入ってきているようにはみえません。
海上からは同じような空気が入ってくる感じです。
日本付近を拡大します。

関東の相当温位は約342kを予想しています。
関東の相当温位の間隔は開いていると考えます。

新しいモデルのイニシャルを見ます。

929時イニシャル
850hPa相当温位と風


関東平野は東京湾でやや高く解析されていまが、関東南部の相当温位は345~6kです。

500hPa気温


500hPaのマイナス6℃の飽和相当温位は342kです。
マイナス6℃線の北側で850hPaの相当温位が342k以上ならSSIはマイナスになります。
500hPa、マイナス5℃の飽和相当温位は344kです。
長野県や関東を含め広い範囲でSSIはすでにマイナスになっています。

温位エマグラム
929時の温位エマグラムをみます。
輪島

非常に危険な分布です。
下層に相当温位340kを超える空気が入れば12000m程度上昇する分布です。
幸い(被害があったらすいません。グレードの問題です)、輪島には下層に高い相当温位の空気塊は入ってきていないようです。
内陸には高相当温位がありますが、海上にはなく水蒸気の積極的な供給元はありません。

館野


自由対流高度は4000m近くになっています。
このグラフから850500hPa間のSSIがマイナスであることが読み取れるでしょうか?
850hPa(高度約1500m)の飽和相当温位は925hPa(約800m)の相当温位より高いので925850hPa間のSSIはプラスです。
これが、関東でエコーが出ていない理由です。
ついでなので、防衛省の方が観測している浜松のデータをみましょう。




850700hPa辺りの飽和相当温位が館野より低くなっています。
飽和相当温位は気圧と温度だけで決まりますから、850700hPa辺りに寒気が入り始めていることがわかります

ざっとエコーの様子を見ます。


9時モデルイニシャルと実況を比べてみます。
9時実況


9時モデルイニシャル
925hPaの相当温位に850hPaの温度(飽和相当温位)を重ねます。



南西風でエコーが流されている様子がわかります。
先走りますが、竜巻は14時頃埼玉県越谷ですから竜巻の発生したエコーは特定できます。
東京奥多摩で発生したエコーが南西風に流され、埼玉県に入ると弱まり、その南側で竜巻を発生させたエコーが東進しました。
静岡県で過大に見えますが、10時には強いエコーが点在するようになります。

地上の相当温位も比べておきます。


925hPaの表現は静岡県では適切ではないのかもしれません。

9212時予想と実況
12時実況


12時モデル予想

A東京西部・埼玉とB千葉茨城県境に355kの高相当温位域が予想されています。
Bは南西風に流され積乱雲にはなれなかったようです。
Aはこれから東京多摩でエコーが発達し埼玉県へ流れ込みます。
本州上でライン状になっているのは志摩半島のものが南西風で流されているのかもしれません。
新潟県中部のエコーは海岸よりになっているのは寒気に近い方に上昇しているものと思います。
Aは弱風域ですので、エコーの動きは実況を追っていけばよいと思います。
12時の地上相当温位を見ておきましょう。

埼玉県越谷はすでに地上相当温位は350355kの間にあります。
850hPaの飽和相当温位は350k以下ですから地上850hPa間は不安定になっています。
9時館野の700hPaの飽和相当温位は10℃として347kです。
500hPa850hPaの温度予想からそれほど変化しないと考えられますから越谷や700hPaに対しても不安定です。
エコーが出ていないのは850700hPaに対流を抑止している層があると考えられます。


13時実況



動画で確認してほしいのですが、竜巻を発生させたエコーは地上相当温位350355kに沿って発達しているように見えます。
その延長線上に越谷があります。
14


台風や前線の中にできると言われるスーパーセルとは異なります。
地上相当温位を見るとやはり350355kの間にエコーはあります。
何故、地上相当温位の高い東京でエコーが発達しなかったのか?
例えば850hPa18℃の飽和相当温位は350kで、850hPa19℃の飽和相当温位は354kです。
このケースでは850hPaの温度が1℃高いと地上相当温位は4k高くないと不安定になりません。
これは不安定な所と安定な所がはっきり分かれると言うことで、必ずしも地上相当温位が高いからと言っても不安定にならない事を意味しています。
当たり前ですが、不安定は下層の暖気と上層の寒気の兼ね合いなのです。
不安定は、温度線に沿ってライン状(寒フレがわかりやすい)に形成されるのが一般的です。
残念ながら、今回の資料ではきれいに寒気をとらえきれませんでしたが、850700hPaの寒気が原因だと想像します。

風の収束が積乱雲を発達させたとの説明が一般的ですが・・
東京の地上空気塊は越谷上空との間で不安定であることは間違えありません。
上下が逆になりますが、私は風呂の栓を抜いたような現象のような気がします。
竜巻は栓を抜いた後の穴が小さいのだろうと思っています。



15


15時モデル予想


海上の不安定域は流されてしまいますので積乱雲に発達しないと考えられます。
少し過大気味ですが、イメージはあっていると思います。
地上相当温位が東京湾で大きく違いますが、ヒートアイランドで仕方がないのかもしれません。
乾燥域が入ってきたと考えてよいと思います。

竜巻の原因ははっきりわかりませんでしたが、竜巻をもたらしたエコーは追いかけることができました。
9時イニシャルのモデルは午後になって入ってきますから、実際に予想ができたかどうか別問題です。
しかし、地上相当温位は毎時確認できますからエコーが東京に近づけば発達すると機械的に判断できたはずです。



結論としては、越谷や東京に溜まった高相当温位と日射がエネルギー源で、おそらく850700hPaの寒気がきっかけだったと思います。
越谷には南から湿った暖かい空気は入ってこなかったと思います。
こともとあって、日射によってさらに温められたのだと考えられます。
東京の高相当温位(ヒートアイランド)も竜巻の一因になっていると思われます。