スタティックエナジと気象の温位はなぜ違う・・?

 

ここでは具体的に気象の温位をスタティックエナジ流に説明したいと思います

 

説明の前に

基礎気象学では物理的前提が欠けているケース多くて・・困るのですが

乾燥空気を断熱圧縮するにはエネルギーが必要なのですが、そのエネルギーが位置エネルギーであることを信じてください。

これを無視した結果がスタティックエナジと気象の温位とが違う原因になっています


1.温位の計算

850hPaで温度T850 

の温位θ850は次のように計算されます

θ850=(850/10000.286*T850

同様に

500hPa温度T500

の温位θ500は次のように計算されます

θ500=(500/10000.286*T500

T850T500は絶対温度です)

となります

細かい理屈等はネットや教科書で調べてください・・;

砂川重信先生の「熱・統計力学の考え方」(岩波書店)P35の例題2が分かれば完璧に乾燥空気のスタティックエナジは理解できるはずです

Kgの乾燥空気の状態方程式で地獄の格闘をするよりはすっきりします


ここでも断熱容器チョモランマを使います



チョモランマ(理想気体)には次の性質があります




これは理想気体の性質なのですが、残念ながら理解するには基礎熱力学の知識が必要です(納得しにくいので省略・;)


次の値は2021070721

館野高層観測(速報値)の観測値です

PhPa) H(m)  T() 絶対温度(K)

1000      70 22.8       295.95

 850     1481 18.2        291.35

 500     5850 -3.9    269.25


この値から850Paの温位を求めてみましょう

空気を理想気体として断熱圧縮すると

θ850=(850/10000.286×T850305.25K

となりました

 

理想気体の大気では1000hPaの温度は305.25Kですから

チョモランマの1000hPaの温度は305.25Kです

気象の温位θ=305.25k

となります


2.乾燥断熱減率と高度差

次にチョモランマで1000hPa850hPaの温度差から高度差を調べます

温度差=305.25291.35=13.9k=13.9

となります

乾燥断熱減率はΓ=-0.0098 /mです

(教科書に載っている乾燥空気は100mあたり約1℃下がるって話です)

850hPaの空気を、位置エネルギーを使って1000hPaまで断熱圧縮した後の高度差は

高度差=温度差/乾燥断熱減率=13.9/0.0098 /m1418.37m1418

となります

チョモランマの1000hPaの高さを0mとしましょう

すると850hPaの高さは1418mとなります 

チョモランマではスタティックエナジは一定(信じてもらうしかない)ですので

850スタティックエナジ(スタティックエナジは温位にCpを掛けた値)は

Cpθ+mg×0CpT850mg×1418 → Cpθ=CpT850mg×1418

となります

 

ここで、注意してもらいたいのは実際の高度は1481mですからチョモランマの1000hPaの実際の高さは

1481141863mだと言うことです

 

 

実在、空気のスタティックエナジを計算してみましょう

地表は勿論高度0mです

実際の850hPa高度は1481m

CpθスタチックCpT850mg×1481

θスタチックT850+(mg/Cp)×1481291.3514.51305.86305.9k

(実は乾燥断熱減率 Γ=-mg/Cpなのです)

気象の温位

気象の温位は1000hPa基準

スタティックエナジは地表面を基準にしていることから差が生じてしまいます


3.500hPaの温位

ここで、気象の500hPaの温位について考えてみましょう

θ500=(500/10000.286*T500328.26k となりました

これはチョモランマで1000hPaの温度となります

500hPaの温度は269.251000hPaとの温度差は

温度差=328.26269.25=59.01

500hPa1000hPaの高度差は

高度差=59.01/0.00916021.426021m

実際の500hPaの高度は5850ですから

チョモランマの1000hPaの高度は58506021=-171m

となります

  ‥;

  ‥;

私は、気象の1000hPaを基準とする温位に物理的根拠はないと思います

850hPaの温位は高度63m1000hPa

500hPaの温位は高度-171mの1000hPaになってしまいます

こうした不都合を防止するためには1000hPaではなく、毎回、海面気圧を用いて温位を計算する必要があるでしょう

上の考え方は間違えです

現実の空気は理想気体ではないので、位置エネルギー、エンタルピー、水蒸気潜熱の3変数で定義すべきです

理想気体では気体Pと高さhが静水圧平衡の式でむすばれて2変数で計算されているのです

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